時報原稿

 教団の時報(2010年12月号の予定)に載せられるであろう報告を掲載します。
 
 過ぐる十月十六日から二十五日まで南アフリカケープタウンで開催された第三回ローザンヌ世界宣教会議に、日本からの三十五名の参加者の一人として出席しました。
 すでに時報上で報告いたしましたが、この会議は「福音の全体・全教会・全世界」を視野において、「神はキリストにおいて世をご自分に和解させられた」(2コリント五・19)をそのテーマとして開かれ、世界一九七カ国から四千人以上の参加者が集められました。
 会議全体は、午前の聖書講解(エペソ書)と基調講演、午後の大分科会と小分科会、夜の各地域と宣教課題に焦点を当てた集会で構成されていました。そして、「真理(多元化した世界にキリストの真理をもたらす)」と「和解(分断され破壊された世界にキリストの平和と和解をもたらす」、「世界の諸宗教(他の宗教の信仰を持つ人々にキリストの愛を証しする)」と「優先課題(キリストのみこころにかなう優先課題)」、「誠実(謙遜・誠実・簡素へのキリスト教会の召命)」と「協力(新しい世界の均衡へのキリストのからだにおける関係づけ)」というテーマについて協議がなされました。
 今回の会議に大きな特徴は、参加者全員を六人の小グループに分け、聖書講解時には共に聖書を学び、その適用について議論し、基調講演時にはそこであげられた課題についてそれぞれの地域の文脈の中で考え、分かち合う点でした。そのため、大きな会議にありがちな話を聞くだけで終わってしまうことなく、自分の思いや意見を分かち合い、世界中に広がる、あたらしい友人を得ることができました。
 会議の中で話し合われたトピックのいくつかをご紹介しましょう(なお、詳細はhttp://d.hatena.ne.jp/ct2010jccj/でご覧になることができます)。
 エペソ書の学びを通して、福音のもつ宇宙大の広がりと、この広がりをこの地上で生きるように召されている教会の姿を教えられました。集まっている人は少なく、社会でも少数派でしかない教会であったとしても、宇宙大の広がりをもつ福音を今、ここで生きることができることの感動を覚えました。
 それとともに、神とキリストに属する富と力の豊かさを知る教会が、今、この時代にそれぞれの地で「歩む」、つまり生きることを重んじないでは、福音の宣教は進まないことが指摘されました。現代の教会において、人々が力と人気と物質的繁栄という現代の偶像崇拝を求めるために、神の宣教を阻害している現実が述べられ、むしろ、神に立ち返って、謙遜と誠実と質素に生きることへの招きが語れました。
 人口の90パーセントがクリスチャンであるルワンダにおいて起こった民族虐殺の現実を振り返る中で、霊性は重んじても、民族間の分断という国家の問題が福音に則って指摘されず、むしろ、人々のあいだで紛争が起こった時には福音とは無関係の「この世的」(先祖伝来)の取り組み方がなされてしまったと語られました。福音に則った生き方ではなく、無批判で受け入れられている日本的なやり方を教会は踏襲してはいないか、チャレンジを受けました。
 最後に、南アフリカの現場で、貧困やAIDS/HIVで苦しんでいる人々のために教会が全力で取り組んでいる姿に、全人的福音の実践を見ました。日本の福音派と呼ばれている教会が、日本に住む人々の現実的問題に関わることによってキリストを証しすることの重要性を再確認しました。
 感謝をもって報告します。